京浜ロックは今年2回目を迎えるロックイベントだ。
昨年の1回目は、実験的に無料で行われた。ステージはトラックの側面が開いてそのままステージなるいわゆるトラック・ステージというもので、これは70年代のローリング・ストーンズやグレイトフル・デッドがこういったステージとともに長いツアーをしていた(機材の不十分な時代、こうして機材ごとロックステージを持って旅をした)、それを踏襲して日本でも生み出されたものだ。どのような場所でもロックステージが行える利点があり、日本のロックバンド中にも70年代後半にこのトラックステージでツアーをしたバンド伝説が残されている。
実験的に行われた第一回は、久保田麻琴と夕焼け楽団の奇跡的なリユニオンが行われ、日本のロックイベントにその足跡を残した。それを支えたのは地元のスタッフたちの、試行錯誤と努力であったとここに記したい。

 今年、第二回。京浜ロックはそのスタッフの熱い思いと、一回目の奇跡、それからもっと新たなこと、素晴らしいことができるのではないかという中から始まった。そして、昨年と同じ10月12日に、それこそ70年代に金沢で行われていた日本の伝説的ロックフェスティバル「夕焼け祭り」に大きく関わっていた久保田麻琴をプロデューサーとして迎え、より充実した音、内容として開催されることとなった。

 日本の夏、津津うらうらで行われるロックフェスとは一味違うものを、現在の良質なリスナーと商業的な音楽の市場が離れてしまったものではなく、聴き手も作り手もともにある、そんなもっと根源的なフェスティバルを自分たちの手で運営開催する……そんな思いの中、発表された出演者は、細野晴臣を始めとして音楽ファンが日本のロックの中、より音楽的であると信頼しているミュージシャンが一同に会している。
そして、ほかフェスティバルともまた顔ぶれが異なっているといえるだろう。
オレンジ・カウンティ・ブラザーズのようなテックス・メックスなサウンドが今のほかのフェスティバルで聴けるであろうか。それこそ細野晴臣がこの数年、カントリー・スィング的なサウンドや、ザ・バンドのような土臭いロックを自身の日本語詞をつけて歌うといった試みもこの京浜ロックの中ではとても自然なものと思えるのである。つまりは、日本のロックの音楽としてのとても根源的なものがここにはあるのではないだろうか。音楽の巨星としての細野晴臣でありながら、音楽を愛する1人の音楽家としての登場。フェスの中で最後に出るのではなく、みんながリラックスしてゆるやかに聴ける海の風を感じる夕闇の落ちる直前、そんな時間帯に細野晴臣は登場する予定だ。そこにもこのフェスのおもしろさ、音楽がある。

 日本のロックの創生期からその音楽を見続け、自身もその中で作品を生み出し続けてきた、そしてその後はアメリカからアジアと広く世界の音楽と関わり作り続けてきた現役のミュージシャン、久保田麻琴というプロデューサーならではの視点、手腕もある。

 けっして懐古というのではなく、創生期から続けている音楽家たちの「今」、そしてコレまでの実績をどう見せ、聴かせていくのか。
そんな中、なるほどなあ、と思うのは、東京ローカル・ホンクの登場の仕方にもある。
東京ローカル・ホンクはとてもバンドらしいバンド、といえばいいのか、決して器用ではないが、自分たちの音と音楽を持ち、長い時間をかけてライブでの評価を得てきているバンドである。

 その東京ローカル・ホンクとともに、あがた森魚、友部正人といったソロシンガーとしても、そしてバンドとともに音楽を奏でても「新しいモノ」を常に生み出してきたアーティストがステージに登場する。

 友部正人はソロでのイメージが強いが、これまでもグルーバーズやたまなどとともにレコーディングやステージを幾度となくこなしている。そして若手のバンド、アーティストからその「言葉」において、あるいは音楽的姿勢において常に一目置かれる存在である。ホンクとも現在レコーディング中という話も聞く。新たな友部正人の音楽が今回、京浜ロックのステージで展開されることも期待できる。あがた森魚はそれこそ70年代には、現在ムーンライダーズの鈴木慶一や武川雅寛らが結成していた「はちみつぱい」とともに活動をしており、そういった意味ではホンクのステージに登場するあがた森魚に期待を馳せる音楽ファンも多いのではないだろうか。

 さらには、その盟友であった鈴木慶一と武川雅寛、それに鈴木博文というハーフ・ムーンライダーズともいえる3人もまた、ホンクと共にステージに登場する。ここには否応なしに期待が高まるばかりである。なぜなら10月、9枚組と言われる70年代当時のライブ音源を集めた「はちみつぱいBOX」が発売されるからで、ホンクとのこの3人の組み合わせの中、バンドとしての3人の音楽、そして新しい何かを思うのは音楽ファンとしては必至のものではないだろうか。

 開場と同時、お客さんが入るときにすでに演奏しているグループがいる。ザディコ・キックスがそれで、ザディコという日本ではまだなじみの少ないニューオリンズの音楽を奏でる。けれどもその演奏は楽しい。入場時からドキドキ・ワクワクが始まる。
トラックステージが2台、二つのステージをうまく利用してムダな転換時間がないように進められる予定だという。ということは、この会場では常に音楽が流れている。そしてそのバンド、出演者1つ1つ、1人1人、プロデューサーである久保田麻琴を始めとしてスタッフが自信を持ってすすめたい音楽を奏でる人たちなのである。

そう、10月12日、この日は1日、京浜ロックで音楽三昧の日、そして新しい音楽を見つけられる日、となるにちがいない。
 




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